星と月と恋の話

「えー、すごっ…」

振り袖と言えば、貸衣装屋さんでレンタルするものと思っていたけど。

でも、そうよね。レンタルじゃなくて、自分だけの振り袖を購入する人だっているし。

そういう人の為に、生地から作る仕立て屋さんがいるんだ。

生地って言うか…反物、だっけ?

その仕立て屋さんが、結月君のお母さんってことか。

すごーい…。

「じゃあ、じゃあじゃあ、もしかして結月君も振り袖を縫えたりするの?」

「ま、まさか。僕は無理ですよ。精々刺繍を手伝うくらいで」

手伝ってるんじゃない。

結月君も、立派な仕立て屋の端くれなのね。

「振り袖は無理でも、浴衣くらいなら縫える?」

「あ、はい…。そんなにクオリティは高くないですけどね」

すご。

言ってみたいよ私も。浴衣くらいなら縫える、って。

私なんて、雑巾すら縫えるかどうか怪しい。

ボタン付けでも難しいのに…。結月君は立派だよ。

「それじゃ、結月君も将来はお母さんの跡を継いで、和服の仕立て屋さんになるの?」

和服の仕立て屋さんなんて、格好良いなぁ。

「どうでしょう。まだ、そこまで考えてないんですけど…」

「何で?格好良いのに」

「か、格好良いですか?」

「格好良いよ」

服の仕立て屋、って時点で格好良いもんね。

「…ここだけの話、やっぱり儲かるの?」

「…えらい質問ですね…」

あ、ごめん。

なんか、おばさん臭い質問だったかな?

でも、オーダーメイドの振り袖なんて、いかにも高そうだし。

そんな振り袖を作ってるなら、やっぱり儲かってるのかなぁって。

…しかし。

「そうでもないですよ」

「…そうなの?」

「えぇ」

…そうなんだ。

そっか、結月君、あんまり余裕ないって言ってたもんね。

ってことは、周囲の人が思うほど儲かってはないのかも。

「反物がそもそも…結構高いですしね。それに、うちは注文数をかなり絞ってるので」

「そうなんだ…。まぁ、一人で一着作るなんて、大変だものね」

「…そうですね」

一着一着オーダーメイドで作るなら、手間暇もかかるだろうし。

結月君の家があんまり裕福じゃないのは、そのせいなのか…。

「だけど、立派な仕事だね」

需要が少なくても、確かに必要な仕事って、あるよね。

結月君の家の家業も、その一つなのかもしれない。

何にせよ、親の仕事を手伝ってるなんて偉いなー。

こういうとき、私ももっと家の手伝いくらいしなきゃいけないなと思う。

…よし、今日の皿洗いは私がやろう。

なんて、私に出来るのはそのくらいだ。

結月君に比べたら、天と地の差があって悲しい。

「えぇ、僕もそう思います」

と、結月君はきっぱりと言った。

ほほう、偉い。

自分の家業に誇りを持ってるんだね。