星と月と恋の話

こうして、4品の献立のうち一品は決まった。
 
…まだデザートだけなんだけど。

って言うか、デザートを一番に決める私達って一体。

普通最後でしょ。

「じゃ、他のメニューはどうする?」

と、隆盛が聞いた。

他のメニューかぁ…。

このグループのメンバーは、結月君以外、皆料理素人な訳だから。

やっぱり簡単なメニューの方が良いわよね。

失敗したら洒落にならないし。

簡単で…でも、手抜きには見えないメニューが良い。

贅沢かな?

よし、こんなときこそ。

「結月君、何か意見ない?」

「えっ…」

えっ、って何よ。さっきから。

このグループで一番頼りにされてること、自覚してないの?

君は頼みの綱なのよ。

何せ、この中で唯一本物のシェフなんだもの。

「簡単に作れて、見栄えも良い。そんな魔法みたいなメニューが良いわ」

「それは…本当に魔法ですね…」

うっ。

世の中、そんなに甘くないと言うのか。

その通りだけど、その通りなんだけど。

でも、ちょっとくらい手抜きしたって…バチは当たらないと思わない?

チーズケーキを炊飯器で作って、既にちょっと手抜きしようとしてる私達が言って良いことじゃないかもしれないけど。

炊飯器でチーズケーキは手抜きじゃないわよ。ねぇ?

ちょっと、オーブンの仕事を炊飯器に任せてるだけじゃん。

「でも、作るのが簡単で美味しいメニューなら色々ありますよ」

おっ、さすがシェフ。

そういうのを待ってたわ。

「何々?どんな料理?」

「えぇと、カレイの煮付けとか…肉じゃがとか…」

「…」

「和え物も楽ですよ。和えるだけですから」

「…」

…結月君ってさ。

本当…和食好きだよね。

君は良い奥さんになるよ。

煮物ばっかり。

いや、和え物は煮物じゃないけど。

「短時間で出来る浅漬けなんかは、添え物に丁度良いですよ」

成程、生活の知恵をありがとう。

でも、なんか違う。

なんか違う気がするのよ。

見て、私以外の他のメンバーの顔。

嘘だろ…みたいな顔してる。

嘘だろとは思わないけど、所帯染みてるなぁとは思う。

いかにも熟練主婦って感じで。

「煮物ばっかじゃん…貧乏くさ…」

と、口を尖らせる海咲。

「魚かよ…。地味だな」

と、こちらも文句を言う正樹。

煮魚案は不評らしい。

正直、私も煮魚はそんなに…。

食べられない訳じゃないし、夕食に出てくることがあればちゃんと食べるけど。

「えー、魚かー」と、ちょっとがっかりする。

魚好きな人、ごめんね。

でも私、お肉派だから。

肉食系女子ですから。

やっぱり、作るならお魚料理より肉料理が良いなぁ。

「魚って生臭くない?内臓取り出したりとか…」

「だよね。私、生魚なんて、気持ち悪くて触れないわ」

隆盛と真菜も、魚案は反対のようだった。

正直、私も生魚…触れないってほどじゃないけど。

鱗を取ったり、内臓を取り出したりは無理。

お母さんがスーパーで魚を買うときも、大抵は切り身か、下処理の必要があるときは、お店の無料サービスでお店の人にやってもらってるし…。