星と月と恋の話

しかし結月君案は、グループのメンバーからは不評で。

「…済みません…」

別に結月君が悪い訳じゃないのに、結月君は小さな声で謝罪した。

だから、君は悪くないんだって。

「洋菓子で何かない?簡単に作れそうなデザート」

最初からこう聞くべきだった。

真菜も海咲も、洋菓子なら何でも好きだろう。

私も好きだし。

「洋菓子…ですか。僕は、あんまり作ったことないんですけど…」

「そっか…」

結月君はどっちかと言うと和食、和菓子派なんだよね。

フルーツサンドも知らなかったし。

すると。

「じゃあ、やっぱりチーズケーキにしようよ」

チーズケーキ好きの海咲が、再度そう提案した。

あんた、本当チーズケーキ好きね。

「レアチーズが良いかな。ニューヨークチーズケーキでも良い」

しかも、ちょっとお洒落なチーズケーキ。

「ふーん…。まぁ、女子達がそれで良いなら別に良いよ」

「チーズケーキなら、俺も食えるし」

隆盛と正樹も、特に異論なし。

私も異論はない。チーズケーキ好きだし。

「結月君は、どう?チーズケーキで良いと思う?」

私は、結月君の意見を確かめてみた。

やっぱり、シェフの一存は大事だ。

すると。

「…良い、とは思いますけど…。時間…かかりそうですね」

え?

「チーズケーキって、時間かかるの?」

混ぜて焼くだけじゃないの?

私のイメージでは、チーズに卵と牛乳を混ぜて焼くだけ、でチーズケーキが出来上がる予定だった。

なんてズボラなレシピ。

私にチーズケーキを作らせたら、きっと酷いものが出来上がるに違いない。

「以前、一回だけ作ったことがあるんですけど…。クリームチーズをすり混ぜる作業に、結構時間と…力も必要なので…」

え、そうなの?

チーズケーキは好きだけど、作ったことはない海咲もポカンとしていた。

「特に今は、寒い季節ですから…」

え?季節関係あるの?

「何で寒い時期だと駄目なの?」

「クリームチーズが室温で溶けないんです…。事前に冷蔵庫から出して、室温に戻す時間があれば良いんですけど、授業前に家庭科室に勝手に入る訳にはいかないので…」

そりゃそうだ。

家庭科室は、包丁とかガスコンロとか、危険なものが置いてあるので。

授業で使うとき以外は、常に施錠されている。

調理前にクリームチーズだけ冷蔵庫から出しておきたいので、一時的に家庭科室の鍵を開けてくれ、と先生に頼めば。

もしかしたら、開けてくれるのかもしれないけど…。

面倒だよね。私達にとっても先生にとっても。

やっぱり、実習時間内に全て完結させたい。

「それから、ボトムを作る作業があるので…。あれが、意外と時間がかかると思います」

「…ボトム…?」

…って何?

ズボンのこと…じゃないよね?