私だって青春を謳歌したいと思うし、キラキラとした恋愛にも興味がある。

それでも一歩を踏み出せないのは、初恋の彼が遠い記憶の中で輝きすぎているからだ。そう簡単に忘れられない。


「ねぇ、遥の初恋ってどんな人?」


「唐突になによ?…初恋は近所のお兄ちゃん。毎日、好き好きって連呼してたなぁ。将来はお兄ちゃんのお嫁さんになるって本気で信じてた」


怪訝な顔をしながらも遙は答えてくれた。


「今は好きじゃないの?」


「中学に入って、いつの間にか同級生を好きになってたかな。お兄ちゃんは憧れの存在ってだけで、相手にされていないのに想い続ける程には恋してなかったんだろうね。ん、もしかして千咲は初恋の相手が、今も好きなの??」


スプーンを置いて身を乗り出してきた遥の額を押す。


「近いっ。好きだったんだけど、今は会ってもいないし、どこに住んでいるかも知らないんだよね。でも彼以上に好きな人が…できなくて」


恋愛話が照れ臭く苦手な私が恥ずかしい話を打ち明けられたのは、遙特有の話しやすい雰囲気のせいだ。