その日の最後の授業は数学で、田中くんは相変わらず俯き加減だった。右隣りの愛ちゃんはじっと彼女を見つめる男子の視線を気にもかけずに、真っ直ぐ前を向いて授業を受けていた。
対照的な2人に挟まれた私はというと、今日もノートをとることに必死で半分も理解できず、出された宿題の多さに肩を落としていた。
「よし、少し早いが今日はここまで。宿題、提出すること。数学係、回収をお願いな」
いつものように授業が終わり、教卓にみんながノートを提出した頃を見計らい、田中くんに声をかける。
「行こう?」
「……」
すぐに立ち上がった田中くんは今日もまた2つに並んだノートの山の高い方を運んでくれた。
無言の優しさに心の中でそっと感謝する。
数学準備室の定位置にノートを置いて解散。
それがこれまで何回も繰り返されて来た流れだったから、私も余計なことを言わずに田中くんの後に続いて数学準備室を出ようとしたけれど、
今日は違った。
「最近どう」
私の方へ振り返った田中くんは唐突にそう聞いてきたのだ。


