教室を大股でわざと足音を立てて歩く姿は、自分の存在の大きさを誇示しているようでイライラする。
手当たり次第、他人のものを奪い、絶対に返さない。誰の目から見ても悪人でしかない。
ついこの間、3年生から奪ったとされるゴールドのブレスレットは高価なものだろう。
いつも色付きのメガネをしているが、そのフレームの形が楕円からまん丸へと変わっていて、それも誰かから取り上げたものではないだろうかと疑うことしかできない。
そして彼が満足気に立ち去った後の教室は一瞬で穏やかなものに変わった。ゲーム機を持ち去られた彼以外は…。
「この間のさ、田中くんは本当にかっこよかったよね。わざわざ永井 大悟の前に立ち塞がるとか、やばくない?思い出すだけで鳥肌立つよ」
「うん、凄かったね」
ただ校内の評価は少し違う。
友達0人の根暗な男子生徒が大悟に挑んだものの弱すぎて一瞬で終わった敗北者。負けるって分かってるのに立ち向かって行った変わり者というレッテルを貼られてしまっている。
彼らは本当の田中くんを知らないから…。
「田中くんってさ、千咲のことが好きなんじゃないの?」
「そんなわけないよ…」
田中くんは今日も昼食を教室でとっていなかった。
きっとひとりになれる場所で、ゆっくり休んでいるのだろう。


