必ず、まもると決めたから。


田中くん…?

顔を洗ったせいで濡れた前髪を後ろに流した彼の姿は新鮮で、釘付けになる。

長い睫毛とはっきりした黒目が相まって目力を感じた。


彼も私を見て、初めて目が合った気がする。
綺麗な黒い瞳に吸い込まれそうで、慌てて目を逸らした。


断然、前髪がない方がいいんですけど…。



海翔(かいと)。それ終わったら、救急箱持って来て」


「えー最近はケンカしてないと思ったのに、また始めたの?」


海翔くんはとても嫌そうに聞いた。


「違うよ。痛いから、早くして」

「はぁい」


トレーに3つコップを乗せてゆっくりと運んできた海翔くんはそれをソファー近くのテーブルに置くと、今度はリビングを出て行った。


入れ代わりに私の横を通り過ぎてソファーに座った田中くんはスエットのパンツの裾を捲る。


「痛む?」


前髪のこと、海翔くんの言った喧嘩のこと、ツッコミたいことはあったけれど今は後回しだ。



「いや、平気。おまえもこっち座れよ」


空いたスペースを手で叩かれて手招きされる。



「あ、いや、私はここで…」


「なに緊張してんの。学校でいつも隣りだろ」


いやいや、机に座っている距離感と、ソファーの隣りに座るそれは別物だよ。しかも田中家だし!


「だって、今の田中くん、全然違うんだもん」