必ず、まもると決めたから。


ヘラヘラと笑った大悟が田中くんの襟元を掴んだ時、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

職員室から丸見えのこともあり、大悟は素早く田中くんから離れた。


「女助けたつもりかもしんないけど、弱いってダサいな」


田中くんの脚を蹴り飛ばし、満足そうに大悟は立ち去った。


「……」


大悟の姿が完全に見えなくなると私だけでなく、周囲から安堵の声が漏れる。



遥はその場にしゃがみ込み、他クラスの女の子に声をかけられていた。


「田中くん…大丈夫?…じゃないよね」


壁に手をつきながら立ち上がる田中くんに手を貸そうとするが、振り払われた。


「帰ったって、先生に言っておいて」


私だけに聞こえる声で田中くんはそう言って、ふらふらと歩き出す。


「待って、保健室に行かないと!」

「……」

「ダメだよ!血が出てる」


制服の袖で鼻を拭った田中くんは鞄も持たずに、下駄箱で靴を履き替えた。


「帰るの?そのままで?」


「……」


「まだ血が止まってないし、痛いでしょ!」


「……」


ここは学校で、私たちの会話が成立しないことが悲しい。