後方から遥の心配する声が聞こえて、顔を上げーー私は、言葉を失った。
「痛ェ」
そこに立って居たのは、永井 大悟だった。
いつも遠くから生徒とのいざこざを見守っているだけだったが、いざ対面すると想像以上の威圧感に言葉を失う。
「ごめんなさい」
それでも全面的に私が悪いので、なんとか言葉にして頭を下げる。
ぶつかった相手が永井 大悟なんて…最悪すぎる。
「はあ?」
眉のない顔で鋭い目で睨み付けられて、怯む。
自分より一回り、いや二回り以上体格の大きい人間に睨まれた私はただ謝ることしかできない。
「ごめんなさい」
「謝って済む問題かよ!」
怒号が飛ぶ。
近くにあったゴミ箱を足で蹴り飛ばし、大きな音を立ててゴミが散乱する。
「本当にすみませんでした」
「はあ?謝って済むなら警察はいらねェよな?」
駆け寄ってきた遥も青白い顔をして一緒に謝ってくれたけど、大悟の怒りは収まりそうにない。


