まだ4月半ばで夜風は涼しいが、心が温かくなる。
「田中くん、優しすぎるよ」
「……」
「ぜひ、お願いします」
「了解」
「田中くんはいつも授業のノートとってないよね。全部暗記してるの?」
毎回疑問に思っていたことを口にすると、田中くんはふっと笑った。
わ、笑った?
レアすぎる…。
「兄貴がさ、ポンコツで。夏休みの宿題を溜めたり、定期テスト前に留年になるって叫びながら、俺に助けを求めて来て、それに付き合う内に自然と頭に入って。なんなく高3までならいけるかも」
凄い。
もちろんその内容も凄いけど、一言でない田中くんの台詞は新鮮だ。
「年上の勉強を見れるって、田中くんの才能だよ」
「それくらい何度も付き合わされたってこと」
嫌そうに言っていたけれど、先程の笑みといい、少し話を聞いただけでも兄弟の仲の良さが伝わってきた。


