大通りを行った方が近道だと知ってはいたが、どちらともなく裏道を歩む。
通行人はほとんどいないから、小さな声でも十分届く。
「英語の授業のこと、ありがとう。教科書もそうだけど、答えを教えてくれて」
「ん」
「私、英語は苦手だし、みんなの前で答えることはもっと苦手なんだよね………新谷くんに教えてもらった方が良いのかな」
教科書に挟まれた満点の答案用紙を思い浮かべながら、最後の方はぼそりと付け加える。満点って本当に尊敬なんですけど…。
「それさ、」
「うん?」
一歩前を歩く田中くんの言葉を待つ。
「…俺にしておけよ」
背中越しに聞こえた声に思わず足を止めた。


