朝は人数も少なかったが、今はクラス中の視線を集める。廊下から興味津々に覗いている生徒も多い。
相変わらず、キラキラしていてオーラが凄い。目尻を下げて困った顔すら美しい。
「色々あって、返しに来れなくてごめんね」
色々の中身が聞きたいが、ここは大人になって頷く。田中くんと筆談できたのは新谷くんのおかげだしね。
「大丈夫だよ」
丁寧に両手で教科書を差し出されて受け取った。
「お礼どうしよっか?」
「お礼ってなんでもいいの?」
横から遥が口を挟む。
身体を滑り込ませて私と新谷くんの間に割って入ってきそうな勢いだ。
「もちろん」
「……」
極上スマイルを向けられた遥は瞬きを忘れて彼を見つめている。一瞬で人を惹きつけるその魅力にクラス中が釘付けだ。
「今は大丈夫。今度、私が教科書を忘れた時に見せてね」
勉強を教えて欲しいと思ったが、2人で勉強している姿を見られたら女子になんて言われるか想像できる。陰口は100%叩かれるだろう。
勉強どころじゃなくなりそうで、やっぱり止めておいた。


