必ず、まもると決めたから。


ノートに視線をおとしたままの田中くんは少しも手を動かす気配はなく、黒板に書かれた例題を解くように指示があってもそれは同じだった。


もしかして授業の内容が易しいのだろうか?私がダメダメなだけ??


1年生から既に塾に通い始めた生徒もいるが、母に負担をかけたくない。高いお金を払って塾行って、理解できるのであればいいけど…ついていけなかったら結局、同じだ。


思わずつきそうになった溜息を呑み込めば、右肘が彼の腕に当たってしまった。


「あ、ごめん」


2人にしか聞こえない小さな声で謝れば、田中くんは小さく頷いた。


最初は迷惑をかける申し訳なさと、続いて速いスピードで進む授業に気を取られていたが、気付いてしまう。


近い…。

距離が、近い…。


わざと重めのヘアスタイルにしていると思うが、癖のないさらさらな毛質は羨ましい。髪型を変えたら田中くんの印象は随分と変わるだろうな。



じっと見すぎたせいで、視線を感じたであろう田中くんはこちらを向いた。


2人の距離がぐっと縮まる。