「ほら、さっさとしろ。授業始めるぞ」
平井先生に急かされて、田中くんを見る。彼は私の方を見てなかったが、無言で机を動かしてくれた。
「本当にごめんね」
「……」
私も机をくっつけると、その中央に教科書を置いてくれた。
昨日に続いてまた迷惑をかけてしまった…。でも少し嬉しい。
英語のノートの片隅に、"昨日もありがとう"そう書いて、田中くんに見せた。
ノートを見てもなんの反応も示さなかったが伝わっているだろう。やっぱり学校では話せないよね…。
田中くんの教科書はメモ書きどころかマーカーを引いた形跡もなく綺麗なままだった。いつもぼんやり教科書を見ていて手を動かしていることは少ない。
とにかく先生が説明していることをひとつ残らずメモしようとペンを走らせる私とは正反対だ。
やっぱり新谷くんに勉強を教えてもらったほうがいいのかな…。


