必ず、まもると決めたから。


真っ暗な我が家に帰っても、気持ちは明るく落ち着かなかった。

ほんの少しまでは同じ数学係という接点だけの私たちであったはずなのに良い意味でその関係が変わったことを、携帯のアドレス帳に並んだ"田中 桜誠"という文字が示している。

入学以来、誰とも関わらずに浮いた存在であった田中くんのことは気になっていた。同じ数学係になったこともあり話してみたいとは思っていたけれど、まさかこんなあっさりと実現してしまうとは思ってもみなくて…。


ベッドにダイブして、暗闇に光る田中 桜誠という名前を見つめる。


綺麗な名前だ。

どうしよう、下の名前で呼んでみたい。
そんな欲求まで生まれてきた。


待て待て、私の馬鹿!


まるで自分が漫画のヒロインになったように浮かれているけれど、今夜のことは田中くんの気まぐれだったかもしれないじゃん。

明日登校して話しかけても、もちろん素っ気なくされるだろうし。連絡しても返事をくれるとは限らないよ。


期待しちゃ、ダメ。

自分にそう言い聞かせながら母が帰って来るまでの間、携帯のアドレス帳を眺め続けた。