必ず、まもると決めたから。


田中くんと階段を降りて教室に向かう。

私たちも一緒にサボりたかったけれど、次の授業は数学だからそうもいかない。


「ねぇ、田中くん」

階段の踊り場で、彼の腕を掴んだ。


「いつまで俺をそう呼ぶの?名前で呼べよ」

「桜誠くん……」

「……なに、」


呼べと言ったのに、桜誠くんは少し頬を赤らめた。
恥ずかしいのはお互い様だね…。


「桜誠くんのこと、大好きだよ」

「俺も」


桜誠くんは短い返事と共に私の手を引いた。一気に距離が縮まり、彼の胸に顔を押しつける。

優しく髪を撫でられた。
その拍子に耳に触れた彼の手がくすぐったくて身をよじると、桜誠くんは笑った。


「千咲のことが好きすぎて、離れたくない」


「……ダメだよ、授業に遅れるよ」


甘い彼の行動に静止すると、桜誠くんは私を強く抱きしめた。


「……ずっと、私のことを護ってくれてありがとう」


出逢った夜も、美山高校の合格発表のその日からも、ずっとずっと護ってくれてありがとう。


「でも護られるだけじゃカッコ悪いから、強くなるよ。ううん、強くなれるって思うんだ。桜誠くんが傍にいてくれるなら」


「俺も、もっと強くなるよ。千咲を傷つけないために。正々堂々、千咲を守るために」


ぽんぽんと背中を叩くと桜誠くんは身体を離して、私の額に口づけた。


「……行くか、数学係は誰にも譲れないしな」

「そうだね」


ぎゅっと手を繋ぎ、階段を駆け降りる。






遥のような真っ直ぐな明るさも、新谷くんのような賢さも、大悟のような強さも、愛ちゃんのような可憐さもーー私にはないものだけれど。


こんな私を好きだと言ってくれる桜誠くんに心配をかけないように強くなりたい。
そして強くなって、いつの日か私が彼を支えられたらいいな。護ってあげられたらいいな。

そのいつかのために、頑張るだけだ。
勉強も頑張って、自分磨きにも力を入れて。


いつか、あなたのピンチを護るから。

必ず、まもると決めたからーー。





【完】 2023.01.15


最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。感謝の気持ちでいっぱいです。