必ず、まもると決めたから。


大悟の登場に萎縮するクラスメートだったが、新谷くんが"いい奴"と触れ回ったかいがあって受け入れようとしていた。

2人が隣りのクラスへ移動すると、大悟といつ親しくなったのかと私の矛先が向いた。

隠す理由もないので、大悟の落とし物を拾ったことによりジュースを奢ってもらったことを話した。


「私も、大悟は悪い人じゃないと思う。みんなに謝ってたってことは、もう嫌がらせはしないんじゃないかな」


思い切ってそう口にすると、クラス委員の横田くんが参考書を閉じて立ち上がった。



「でもこれまで彼にされてきたことを、なかったことにはできないよ。普通に怖いし。それに、青山さんだって、大悟に手を上げられそうになったことあるよね?」


事実をなかったことにはできないけれど、記憶は風化する。これからの大悟の行い次第で、みんなの中にある嫌な気持ちを薄れさせることができると私は思うんだ。


「ううん、ないよ。確かに廊下でぶつかった時は恐怖しかなかったけど、私、見たことないんだよね。大悟が、女子に嫌がらせをしてるところ」


「それは、確かに…」


彼の対象はいつも男子生徒で、女子から物を取り上げたり嫌がらせをしている場面は見たことがない。大悟の中に良心があるからこそ、女子に手を上げなかったのだろう。


「まぁ、これからの彼次第だな」


横田くんがそういうと、クラスの大半が頷いた。

お母さんが自分の傍からいなくなった虚無感と、それでも何事もなく回る日常が許せなかったのだと思う。もしまた大悟が横柄な態度をとっても、今度は大丈夫。見て見ぬフリはもうしないし、新谷くんだって止めてくれると思うから、きっと大悟は変われる。


「そうだね、私は永井大悟から何もされてないし、彼が変わろうとしてるなら同級生として応援するよ」


遥がそう答えてくれた時、教室の後扉が開き、そのタイミングで授業開始のチャイムが鳴り響く。


「……」


教室の中に入って来た彼の姿を見た瞬間に、席に着こうとした私や、遥、横田くんたちは動きを止めた。


「田中くん!?」


驚きのあまり思ったより大きな声が出てしまった。



「おはよ」

そう言って私の目を見てくれた田中くんの前髪はバッサリと切られていた。