必ず、まもると決めたから。


「困ったわ」

彼女は俺から木の枝をとると、桜誠の文字の周りに桜の花びらのイラストを書き足した。


「私、たくさんの幸せを咲かせないといけないから、桜誠くんにとっての桜が咲かないと困るよ」


「なんだよそれ」


「桜誠くんが幸せであればいいなって、思って。今日も明日も、何十年後も。だってあなたは私にとってのヒーローだから」


「…大袈裟な」


話しながらも地面に桜が付け足されていく。


「また、会えたらいいな」

地面に視線を向けたまま彼女は言った。
不思議と、同じことを思っていた。


「俺、兄と同じ美山高校を受験して絶対に受かるからこの街に戻った時、会いに来くれば?」


疑問系で終わらせるなんて卑怯だ。
こういう時、京介だったら"待ってるね"って素直に言えるんだろうな。


「美山高校?美しい山?」

「ああ。ここから1時間くらいの私立高校」

「分かった!」


彼女は俺に小指を差し出した。


「絶対に会いにいくね。約束!」


彼女の思いに応えるように小指を絡める。

きつく力を込めて絡められた小指に、彼女の強い意志を感じた。



ベンチに座り直した時には、兄から、『7人組の男たち、他のお姉さんにも絡んでたから警察に突き出しておいたぞ』と頼もしいメールが入っていた。

兄はこの辺で何度も補導されていて、警察とも顔見知りだから上手くやってくれたのだと思う。


「送るよ」


まだ話していたかったけれど、眠そうに目を擦った彼女にそう声をかけた。