必ず、まもると決めたから。


まだ夜は少し肌寒く、彼女は肩を刺さった。

「着れば」

革ジャンを羽織った彼女はお礼の代わりに白い歯を見せて綺麗に笑った。

今まで泣きそうな彼女が初めて笑ったその瞬間、その輝きは満月よりも眩しく、俺の心を射抜く。


「私、青山 チサキ。中1です」


名乗る彼女の隣りに腰掛ける。


「…田中 桜誠です。同じく中1」

「私と同じなの?大人相手に凄かった!助けてくれてありがとうございます」


初対面の相手に満面の笑顔で話せるのは、転校が多いせいなのか持ち前の明るさなのかは分からないけれど、ほっとした。

男たちに囲まれて怖い思いをしただろうけれど、助けられて良かった。


「オウセイくんってどういう漢字なの?」

「そっちは?」


彼女はひょいっとベンチから降りて、落ちていた木の枝で地面に名前を書いた。丸っこい女の子らしい字体だった。


"千咲"


「私は泣き虫だし名前負けしてるから、みんなには内緒なんだけど。助けてくれたあなたには特別に教えるね」


彼女は自分の名前をぐるぐると囲んだ。


「たくさんの幸せを咲かせられますようにって、願いが込められてるの。…あなたは?」


彼女から木の枝を渡され、その隣りに"桜誠"と刻む。


「綺麗な名前!桜に誠か…どんな意味なの?」


「そのまんま。桜のように咲き誇り、誠実に生きて欲しいって」


そんな生き方をできるはずがないと両親には申し訳なく思うけど、桜誠という名前は嫌いじゃない。


「そっか!桜誠くんの名前にも咲くが入ってるんだね。お揃いだね」

「たいそうな生き方はできないし、俺も名前に勝てる気はしないよ」


会ったばかりの女の子にネガティブな本心をうっかり話してしまった。今夜は感傷に浸りたい気分なのだろうか。