深夜3時。
今夜は満月で、繁華街を行き交う人々を照らしているけれど、俺の心は少しも晴れない。
日付が変わる少し前、京介と別れた。
『私は京介のことを本当の弟だと思ってるから』そう告げられたと、珍しく泣き出しそうな顔であいつは言った。
京介の4つ年上の血の繋がらない姉への思いにはなんとなく気付いていたし、心の中で応援していたが、そう簡単に実るものではないらしい。それどころかその想いを封印することが家族のためになるなんて皮肉なものだ。
深夜にも関わらず流れる軽快な音楽が耳障りで、叫び出しそうになる。
「はぁ」
左耳のピアスに触れる。
京介も眠れない夜を過ごしているのだろう。
母を亡くしたその日から薄ら笑いを浮かべて、虚勢を張って踏ん張り続けて来た京介の生き方を神様とやらは、見ていないのだろうか。
そして田中 桜誠。おまえは京介のために、なにができるんだ?
「止めてください!」
再び夜空を仰いだ俺の耳に、悲鳴に似た声が届いた。
「いいじゃん、時間とらせてないから一緒においで」
声の方向を見れば、か細い腕がタトゥー入りの汚らしい手に捕捉されていた。
「嫌です!」
俺と同じ中学生くらいだろうか。
小柄な女の子が必死に抵抗していた。
話を聞かなくてもこの状況を見れば何が起きているかは一目瞭然だが、酒の混じった通行人は足を止めることはしなかった。


