それでも彼の優しさはいつも通りで、田中くんは夜空を見上げて私が落ち着くまで待っていてくれた。
しっかりと私の手を繋いで、あのキスが夢でないことを示しながら。
「…私も好きだよ」
何分経っただろうか。
やっと紡げたその言葉に、田中くんは照れながら頷いてくれた。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
あの出逢いを覚えていてくれて。
いつも助けてくれて。
私を好きになってくれて、ありがとう。
「他に聞きたいことや気になっていることはない?今は偽りなく話せるよ」
「…胸がいっぱいで、なにも考えられないよ」
突然、両想いになって、キ、キスもして!これ以上、何か話せなんてキャパオーバーだ。
「じゃぁ言葉はいらないってことで。抱きしめさせて」
「は?」
田中くんは腰を上げて私の方へ移動すると更に距離を縮めてきた。
「告白してもらって両想いだと知ったのに、好きな子に触れられない俺の気持ち分かる?」
「し、知らないよ」
慌てると腰を引き寄せられ、あっという間に彼の腕の中に閉じ込められる。ただただ心地よい温もりに酔う。
「じゃぁ、来る予定もない弟たちを理由にして、好きな女の子を花火に誘う男の気持ちは分かる?」
彼は私の耳元で囁いた。
「え、」
来る予定もない?それって最初から2人きりの予定だったの?
「俺のことは名字なのに、永井のことは大悟って呼ぶ彼女の気持ちは俺には分からないな…」
「べ、別に深い意味はないよ」
嘆く彼に強く言い返すと、「名前、呼んでよ」そう耳元で甘えた声が聞こえた。


