必ず、まもると決めたから。


「静岡から東京の病院に転院することになって、俺もついてきた。荒れる俺に、周りの大人や先生たちは可哀想な子だから仕方ないって言うんだ。誰も退学にしないでくれって頼んでもないのに、お母さんのこともあるから多めに見るよって、口を揃えて言うけれど退学や補導されることなんて、どうでもいい。早く母さんが治れば、俺はそれでいいんだ……」


もしかして大切にしていた御守りにも同じ願いが込められているのかな。

母親のことで苦しむ大悟に大人たちは寛大な対応をしたつもりでも、それが余計に大悟の心を蝕んでいたのだろう。本当の意味で自分を叱ってくれる大人がいないのだ。


「俺には理解できるよ!」

この場に相応しくない明るい声で新谷くんは言い、大悟の肩に手を回した。その手はすぐに振り払われて大悟に冷ややかな視線を向けられていた。


「喧嘩して擦り傷を作ってたらお母さんも心配するだろ。もっと高校生らしいことして安心させようよ!……俺は幼い頃に母親を亡くしているから二度と会えないけど、君は違うんだからさ」


「……そうか」


新谷くんになら大悟の気持ちが、本当の意味で理解できるのかもしれない。私には大悟の悲しい日常を想像することしかできやしないから。


「君のむさ苦しい顔よりも俺の美貌を見た方がお母さんの心も安らぐかもしれないし、お見舞いに行くよ」


田中くんは何も言わなかった。
私も安易な発言は大悟には響かないと思い、上手く伝えられずにいた。


「………」


大悟は近くの大木に手をかけてゆっくりと立ち上がる。

田中くんが蹴り上げた足が痛むようで顔をしかめた。


「悪い、病院に行こう」

「……ひとりで行けるさ」


大悟は田中くんにそう言って、よろよろと歩き始めた。


「途中でタクシーを拾うから大丈夫。後は俺に任せて」


「いや、俺も…」


新谷くんは大悟の右側を支えて笑った。


「大悟の気持ちも考えたら?」


有無を言わせない新谷くんの言葉に田中くんはぴたりと動きを止めた。