出店が立ち並び、混雑していて境内まで辿り着くには随分と時間がかかりそうだ。
田中くんは私に合わせてゆっくりと歩いてくれた。
並んで歩いているものの目が合うことはなく、浴衣についてもノーコメントだ。まぁ、いいんだ。子守りがなくなったのに、それでも私と来てくれたし。十分だよね。
「お腹は?」
「空いてる!お昼ご飯をぬいてきたの」
「なにがいい?」
立ち並ぶどのお店からも良い香りが漂ってくる。お好み焼きもいいし、やきそばも食べたいけれど、綿菓子もお祭りでしか買えないし…。
首を振りながら左右を見渡すと、田中くんは私の手を引いた。
「真ん中で立ち止まってたら危ないから」
人の流れを掻き分けて道の端の方に誘導してもらう。
「ごめん。色々と迷っちゃって」
「ゆっくり決めていいよ。花火まで時間はあるし」
「……うん」
優しい。
一緒に来れて良かった。
迷った末にたこ焼きを選択すると、また手を引いてお店まで連れて行ってくれて、おまけにお金も払ってくれた。


