必ず、まもると決めたから。


数学準備室にノートを運び終えて、田中くんと向き合う。今日も愛ちゃんが登校していたが、声をかけられることはなかった。


「田中くんのおかげでどの教科も補講を免れました!ありがとうございます」


「良かった」


電気もつけずに薄暗い中で話すが、此処に私たちが居ることを誰にも知られたくないと思う。誰かに、邪魔されたくない。


「数学しか90点とれなかったけど…」

「約束は守るよ」



いつものように目にかかった前髪が彼の表情を乏しくさせる。


「…やっぱり、いいや。満点とるくらいじゃないとね。田中くんが、話したくなったらでいいよ」


「なんか落ち込んでる?」


「勉強時間がない愛ちゃんが検定試験に受かってるのに、勉強しかしていない私が……」


田中くんの足元に視線を落とす。
良かった。前髪があって良かった。
彼の真っ直ぐな瞳に射抜かれたら、弱い心を見透かせてしまう。


「焦る必要はない。千咲は千咲らしく、進めばいいだろ」


「でも……」


「すぐに結果が出ることの方が少ないだろ。大丈夫だよ」


"大丈夫だよ"田中くんのその言葉は偉大だ。

好きな人の言葉はよどみなく心に届く。


たまに、私を"千咲"と呼ぶ彼の声が大好きだ。