続いて登場した大悟はいつものようにやりたい放題に振る舞い、昼食後の英語の授業では再び愛ちゃんが注目を浴びた。
平井先生は教室に入ってくるなり、愛ちゃんを見て彼には珍しい明るい声で言った。
「佐々木、英検2級に受かったそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます」
誰も声には出さなかったが、心の中で感心しているだろう。もう何人か英語の得意な生徒が同じ検定に合格しているが、仕事の合間に勉強したとなると難易度は上がる。
無表情に見えてその口元は緩んでいるため平井先生も相当嬉しいのだと見てとれた。
ドラマの撮影、恋愛に、勉強に。
彼女は私が想像していたよりも多忙だったようだ。
できる人はなんでもできるし、できない人は全てが上手くいかないように世の中は動いているのかもしれない。
「私、学校を休みがちだし、テスト当日に出席できない日は、後日にみんなと違う問題を受けているから、簡単にしてもらってるんだろうなんて憶測が飛んだりしてます。…そうじゃないってことを、証明したくて勉強しました。結果が出たら、みんなに少しは認めてもらえる気がして…」
愛ちゃんは眉を下げて寂しそうに笑う。それが演技なのか真横で見ていても判断できないが、周囲に認めてもらいたいという思いは本心であるような気がした。
「そうか。これからも励め」
「はい」
それでもこのクラスに彼女の検定合格に素直におめでとうと言える生徒は少ないだろう。
私だって、毎日精一杯勉強しているのに…仕事をしていて時間のない愛ちゃんに負けてるんだ。
それは完全なる敗北に他ならない。
恋でも、勉強でも、佐々木 愛には敵わないのだと見せつけられているようで、悔しさを通り越して情けない気持ちでいっぱいだ。


