「本当に2人とも、頭が良くて羨ましい」
コーンをかじりながら問題集をペラペラ捲る。1年かけてこの問題集を解き進めるのではなく、残念ながらパートⅡが控えている。
「まぁモテる男は、勉強もできなきゃ。俺は完璧を目指してるから」
「うわー、新谷くんが言うと説得力あるよ」
冗談でなく、本当にそう思う。
この人には、友を想う心も、私のことを励ましてくれる優しさもある。勉強ができるとか、スポーツ万能とか、そんなものを卓越する、彼の空気を、人の心を読み解く力には脱帽だ。彼が普段からよく周りを、他者を見ているからこそ成せることだと思う。
「…物心つく前に母親を亡くして、父が再婚したいと大切な女性を紹介してくれた日から、俺は完璧であろうと決意したんだ。父の新たな幸せを壊さないために」
突然、新谷くんはそう明かした。
「そうなんだ…」
「うん。ただ、どうしても再婚相手を母さんと呼ぶことができなくて、それだけは認めたくなくて、もがいてた時期もある。中学1年の俺には新しい母の存在は重すぎたんだよね」
中学1年生。そう簡単に整理をつけられる年ではないだろう。もちろん、高校生になった今だって同じだ。
「再婚相手にも子供がいてね。俺より4つ年上の姉貴。姉貴はさ、俺たちを本当の家族にしたいみたいで、家族になったその日からずっと奮闘してきた。誕生日やクリスマスのイベントは家族で盛大に祝おうってサプライズ計画したり、家族旅行に行きたがったり、色々と一生懸命にしてくれたよ」
両肘をつき手を組んだ新谷くんは穏やかに笑っていた。田中くんは私の隣りに座ったまま無言でソフトクリームを食べている。
「姉貴のおかげで、再婚相手にすっかり打ち解けた俺は、今は母さんって呼べてるんだ」
そっか、良かった。
これは重い話ではなく、いい話だ。
家族が、本物の家族になった話。
「でもさ、姉ことは未だに姉貴と呼べず、名前にサン付け。…なんでだと思う?」
先ほど旅行に行くと言っていたお姉さんだろうか。心配していたし、嫌ってはいないのだと思ったけど、名前で呼んでいる理由?うーん、なんだろう…。
「姉だと思ってないから、思いたくないからだよ」
ーー好きだから。
そう付け加えられた言葉に、持っていたアイスを落としそうになった。


