「お腹空いたね。飲み物を買ってくる?」
次の瞬間には新谷くんは優しい微笑みで私を包み込んでくれた。
「この新作も気になるんだよね」
壁際に貼られたポスターにはチリソースのホットドッグが描かれていた。
「新谷くんは、辛いもの得意なの?」
「うん。桜誠も好きだよね?」
新谷くんがそう言うと、
「おまえ、急になんだよ」
私の背後に不機嫌そうな田中くんが立っていた。
腕組みをして今にも舌打ちをしそうな様子だ。
あれ?もしかして私が来ること知らなかった?
「私、帰るよ!ごめ…」
慌てて立ち上がろうとすると、肩を少し強めに押された。
「勉強会するんだろう」
「あ、うん」
「くっ、…」
私たちを交互に見て新谷くんは堪えきれずに、吹き出した。
「俺と千咲ちゃんが2人で勉強するって言ったら、堪らず駆けつけた男だよ。面白すぎ…あははっ、」
「……」
「……」
白い歯を見せて笑う新谷くんと、眉間に皺を寄せて彼を睨む田中くんの間で、嬉しい私は口角が上がりそうになる顔をなんとか押さえた。


