大悟の眉がぴくりと動いた。
まずい、まずい…怒鳴られるだろうと身構える。
「…本当か、」
「え?」
「切れても縁起は悪くないのか?」
「あ、うん。大切にしていた御守りが切れることって、縁起がいいんだって。いいことが起きる前触れって私は聞いたことあるよ」
「…そうか」
あれ?
頷いた大悟は御守りをバッグにしまった。
「おまえ、誰?」
「…あ、青山 千咲です。1年A組の」
「A組の青山か…」
怒鳴る彼でもなく、つっかかってくるわけでもなく初めて見る大悟だった。
「サンキュ」
「あ、うん…どういたしまして」
相変わらず色付き眼鏡が強面の顔に拍車をかけているが、何故か今日の大悟はいつもと違った。あまり体調が優れないのかもしれない。
軽く会釈するとC組の教室に入って行った。
残された私は唖然としてしばらくその場を動けなかった。
待って、今の、永井 大悟で間違いないよね?
有難いことに大悟のことで気が紛れて、田中くんのことが一瞬、頭から離れていた。


