周囲には誰もおらず、その状況が余計に私を心配させた。
「あ?」
私を萎縮させるには十分な低い声と、隠そうとしない苛立ちを前に今すぐにでも逃げ出したいと思う。
その前に、御守りを渡さないと。
「あの、御守り」
「……」
彼に近付き私が掲げた御守りを見て、目を開いた大悟は慌てて自身のバッグを肩から下ろした。
そしてバッグをその場に落とし、
「返せ!」
ひったくる勢いで手から御守りを奪う。
一瞬、彼の爪が掌に食い込んだ。
「…糸、切れたか……」
それは私宛ではない呟きだった。
きっと通学バッグにつけていたのだろう。気落ちした様子からして大切なものなのだろうな。
「糸が切れると、ご利益があるって言うよね」
何故、そう発したのかは分からない。
大悟を前によく考えもせず、そう発言していた。


