6月中旬になり、すっかり学校生活にも慣れたが、
それでも階段で座り込んでいる大悟を見て、反射的に足を止めてしまうのは慣れよりも警戒心が上回るためだ。
普段から特に人通りの多いその階段は閑散としていて、大悟の存在に気付くとみな踵を返していた。
これから全体集会に参加するため体育館に移動しなければならず、遠回りになるが別の階段を使おうとクラスのみんなが同じ選択をする。
「田中くん!」
私と遥よりも少し先を歩いていた田中くんを呼ぶ声が背後から聞こえた。振り返らなくても分かる声の主は相変わらず、彼にに付き纏っている。
「あ?田中だと?」
彼女の声に反応して持っていたゲーム機から大悟が顔を上げると、さすがの愛ちゃんも黙ってしまう。
「俺は、田中って名前が世界一嫌いなんだ。2度と、その名前を呼ぶな!」
なにを勝手な…名前なんだから、呼ぶに決まってるじゃん。
田中くんは取り合わず、別の階段に続く廊下を進む。愛ちゃんも大悟から逃げるようにその背中を追う。
私は、未だに田中くんときちんと話せていない。
数学係はいつも通りあるが気まずい雰囲気のまま、
何も話せないでいた。
前に言ってた親友って新谷くんのこと?
って、それすら聞けずにいるんだ。


