必ず、まもると決めたから。


「中学1年生の夏、何度目か分からない父親の転勤を控えていて、せっかく親しくなれた友達と離れ離れになることも、新しい土地に行くことも不安で、真夜中に家を飛び出したの」


正確な時間は覚えていないけれど、結構遅い時間だった。深夜3時過ぎくらいかな。


「行く当てもなく街を彷徨ってた。繁華街を歩いている時に、私がぼーっとしていたせいでね、男の人にぶつかったの。その人はね、5、6人の不良を引き連れてて、体格も良くて、見るからに悪い人だった。タトゥーなんかも入っててさ。ぶつかったことを責められはしなかったけど、代わりに一緒に飲もうと言われて、未成年だから断ったのね。でも囲まれて、逃げられなくて、行き交う通行人は見て見ぬフリだった」


自分より一回り以上、大きい複数の男に囲まれる恐怖。少なからずいた通行人は保身に走り、声すらかけてくれなかった。あの時の恐怖はこの間、大悟に対峙した時とは比べられない。


「ああ、私、大変なことになっちゃうのかなって泣きそうになった時、ひとりの人が唐突に私の手を引いてくれたの。振り返ってみると、その人は私と同じくらいの年齢の男の子で、力強い目力で不良たちを睨んでた。男の子がひとり登場したくらいで不良たちは揺らがなかったけど、その子は警察に通報済みのことを宣言して、更にーー私がぶつかったその彼の足に蹴りを入れたんだ」


「中学生の子が?」


それまで黙って聞いていた遥が驚きの声を上げた。


「うん。不良は驚きのあまり尻餅をついて、その隙に男の子に引っ張られて、私たちは逃げたんだ。無事に、逃げ切れて、初めて男の子の名前を聞いたの。その子ねーー、」


あの夜、満月の下で彼に手を引かれて、走った。

恐怖のせいでなく、自分と同じくらいの年の子が大人相手に立ち向かったことへの興奮が収まらなかった。

ずっと、ドキドキしてた。


その子ね、


「田中 桜誠と名乗ったの」



遥の目が見開く。



あの夜の出来事を、いつしか私は"初恋"と呼んでいた。