愛ちゃんのことを特別だと思われたくないから、庇うことはしなかったと新谷くんは言っていたけれど。
ほとぼりの冷めたこの状況だからこそ、彼の言葉は真っ直ぐに伝わったのだと思う。
あの時、同じことを言っても言い訳にしか聞こえず、真意を疑う生徒の方が多かったはずだ。
「それとね、愛ちゃん。最後に君に言わせて」
「…なに」
愛ちゃんは胸に手を当てた。
「君の髪を学校で切る?そんな話が俺の耳に入ってきてさ。そんで、彼に助けてもらったとか」
新谷くんが頬杖をついて教卓を見ていた田中くんを指差した。
表情は変わらなかったけれど、田中くんからは溜息が漏れた。
「愛ちゃん、君のためじゃないよ」
「え?」
すっと、新谷くんの声色が変わった。
微笑みを消し去る。
「田中桜誠が、君を助けたのは、君のためじゃない」
「……」
怒鳴っているわけでも、怒っているわけでもないのに、何故か怖いと思った。疑問の声を発するどころか、誰も物音ひとつ立てなかった。
「彼が、君を助けたのは、俺のためだ」
そうきっぱり言い切った新谷くんは教壇から下りて、田中くんの側に歩み寄った。


