新谷くんはお礼と言うけれど、お礼をしなきゃいけないのは励まされた私の方かも?
「あの、千咲ちゃん」
「愛ちゃん?」
何故か彼女は土砂降りの雨の中、校門に立っていて私を呼び止めた。
「さっきはありがとう」
「さっき?」
「千咲ちゃんが助言してくれたから、田中くんと勉強会できることになったの。そのお礼が、言いたくて」
そっか、またお礼か…。
「私は何もしてないよ」
スカートから覗く白く細い足。
表情豊かな可愛らしい顔。
この子に心動かないのは新谷くんだけでしょ、やっぱり…。
同性の私でさえ見惚れてしまう。
「私、田中くんのこと好きになっちゃった」
「新谷くんのことは…?」
「過去のことはもういいの」
少し強めの声色に彼女の意思が見えた。
「今は田中くんのことが好き。だから、協力してくれる?」
雨の音がうるさい。
傘に水滴が溜まり、一気に傘が重くなった気がした。


