えーっと、何階だっけ。

4034‥ 4階か。


4階のボタンを押し、扉が閉まる。
1階‥2階‥3階‥

エレベーターが上がる度に
少し、胸が高鳴る。


エレベーターの中の鏡でリップグロスを塗り直して、少し微笑んでみせる。


「 完璧」

それは、自分への気合い入れであり、落ち着かせる魔法の言葉だと、彼女は思っている。



そして華奢なピンヒールで部屋に向かう。
「4034‥よんまるさん‥」


━ピンポーン


ガチャ
「‥いらっしゃい、実桜。」

「久しぶり、パパ。」

私は彼のことをパパと呼ぶ。
初めて会った日にパパになって欲しいとお願いしたからだ。
その日以来あたしと彼の間で契約が結ばれた。
いわゆる売春関係になった。
これは、あたしの作戦だった。



彼の笑顔で迎えられた私は、惹き付けられるように、抱き締められる。

「ちょっと!くるしーって!」

彼は微笑みながら聞く。
「寒かった?」

「超ー寒かったよー。」
困ったような顔をしてみる。


それを見て、また軽く微笑んで彼はキスを落とす。

軽いキス。
パパの唇はあったかい。



「どうぞ。」
彼は中に誘う。

彼に手を引かれ、部屋の中を見るとあったかそうな照明で照らされている。

あたしはこの空間が大好きなんだ。
2人だけの世界で、独り占めできるから。

「今日はお仕事どこだったの?」
「今日は朝大阪で、昼から東京。」
「そっかー、相変わらずハードなんだねぇ。」

「ほんと、疲れたよー。いつまで続くんだか。‥まぁ続いてくれないと困るんだけどね。」

「ははっそうだねー。実桜は、お仕事してるときのパパがいちばん好きー」

「お前よく言うよね、それ。」

「えーそう?」


確かに、前にもメールで言ったっけ。
ほんとに好きなんだ。
お仕事してるパパ。

だって、パパは業界のお仕事だもん。

うん、いわゆる芸能界。


だから 狙った
とも言えるのよね、きっと。