目を開けられないのは熱のせいでめまいがするのだろう。

何とか口元にスポーツドリンクを運ぶと少しだけ朱莉は口に含んでくれた。
「熱高いから病院行きたいけど、動けないか?」
俺の言葉に頷く朱莉。
「わかった。少し落ち着いてから行こう。薬持ってくる。」
体調を崩すことの多い朱莉は病院から常に薬をもらって手元に置いている。

解熱剤を飲む必要がある。

俺は薬と水を用意して、朱莉の元へ戻り、再び朱莉の体を起こして薬を飲ませた。

「仕事、行って。」
絞り出すようなかすれた声の朱莉。
一体いつから体調が悪かったのだろう。

早く気付けばよかった。
一人でしんどかっただろうに。
一人で心細かっただろうに。
「バカか」思わずそう口にしてから、俺はそっと朱莉の体をベッドに戻し、朱莉の顔にかかる髪をかき上げた。