「帰るぞ」
朱莉の言葉を半ば無視して俺は朱莉の手を握ったまま歩き始める。

何年も・・・何年も・・・

こうして朱莉の手を握っているのに、あの日つかめなかった朱莉の手。
握った冷たすぎる空気の感覚が消えない。

せめてもの罪悪感からしているだけの俺の行為は、朱莉をただ俺の罪悪感の性で縛りつけているだけだ。

この手を離したら、朱莉は自由に未来をつかめるだろうか。

失ってしまった光を取り戻すことができるだろうか・・・。

俺が隣に居ることで奪っていることはたくさんあるのだろう。
そう知っているのに、俺にはどうしてもこの手を離すことができない。