男気ある黒須くんの言動はその日のうちに校内に広まり、男子の彼に対する評価は上がる一方だった。

そして女子からも。



「ねえねえ、黒須って良くない?」



学校の帰り道、友達の結菜が唐突に言ってきた。



「え、うん。顔はけっこうタイプかな」


「でもヤンキーだしねえ。暴走族って噂もあるし」


「そうなの?

てか暴走族ってまだ居たんだ…」


「あ、居るよ。隣のクラスの前田さんがこの前暴走族にナンパされて、しつこいから怒鳴ったんだって。そしたら、

`お前オモシレー女だな。ウチのチームの姫になれ´って勧誘されたってノンちゃんが言ってた」


「リアルにあるの!?その流れ」


「まあウチらには無縁な人種だけどね。

…あ、アタシ今日バイトだから、こっち」


「あ、うん。じゃあね」



結菜の言うとおり、私みたいに目立たないタイプの女子からすれば、いくら黒須くんがカッコイイからといって、接点なんて用意されていないだろうと思っていた。

この曲がり角を曲がるまでは。



「なんだテメー、やんのかコラーッ」


(!?)


「ああ?昨日は警察沙汰になるのビビって逃げたチキン野郎がなにピーピーさえずってんだコラ」


(え、なに…喧嘩!?

てかニワトリはピーピー鳴かないよ!?)