クラスに一人、不良が居た。



「どうしよう…リー君もしかしたら停学になるかも知れねえ…」


「なんで?」



彼は男子達からの人望が厚く、無愛想なくせにいつも男に囲まれている。

ちなみに私こと伊藤由々(イトウユユ)は、
現在、教室で友達と話をしながら男子達の会話に聞き耳を立てている最中。



「昨日さ…太田と帰ってる時に変な三人組のヤンキーとすれ違って、因縁つけられたんだよね…今オレら見て何か言ったっぺ?とか言われて」


「言ったっぺ!?」



いや、方言は食いつく所じゃないっぺよ男子A。



「その中に一人ヤベー奴が居てさ、俺に顔を近づけながら威嚇してきたんだよ…

…タバコ2本同時に吸いながら」


「マジ!?」


「ああ…電子タバコだった…」


「それは…ヤベーな…」


(両手でチューチュー!?それ怖いの!?)



不良とはご縁の無い人生だけど、不良の話はなぜか好き。

なんなら昨日のドラマの話をする結菜の口にガムテープを貼ってでも背中の声に集中したいくらい。




「それでどうなったん?」


「急にリー君がスッと現れてさ、威嚇される俺の前に立ちはだかってくれたんだ」


「さすがリー君!男の中の男!

それで?」


「おもむろにコンビニ袋からパンドリチップスを取り出して、3袋同時に食べながらそいつに威嚇し返してくれたんだ」


「3袋同時!?さっすがリー君!!」



(……何が!?

てかヤンキーのくせに推しのカード狙いつつ中身をしっかり自分で全部食べるとか偉いね!!)




リー君こと黒須李伊(クロスリイ)

私は同じクラスになってから彼とは一言も会話をした事がない。

これまでの印象は無愛想でふてぶてしい奴だったが、今の話といい、男子達の高評価といい、彼はもしかしたら面白い男なのではと、少し興味が湧いてきた。