その1



ユウトから律也にメールが届いたのは、その2日後のことであった。
この夜、 入浴を済ませて自室に戻ると、ケータイのメール受信を告げるランプが点滅していたのだ。


≪こんばんわ。早速ですが、先日の関連で話したいので、明日の昼休み屋上でいいですか?≫


≪了解しました。明日の昼休み、屋上に行きます。雨天決行ですね?(笑)≫



≪”あの時”の雨ぐらいなら(笑)。では、明日よろしく≫


何とも端的なやり取りだったが、律也にはなんとなく予測が立っていた。
それは、きっかけ…。
彼の頭には、そんなキーワードが浮かんでいた。



***


翌日は雨ではなかった。
その代わり、えらい風が吹いていたが…。


給食を終えるとすぐ、律也は屋上へ向かった。
ユウトはすでに、屋上昇降口付近のフェンスに持たれて待っていた。
いつものさわやかな笑顔で。
やや長い髪を風にそよがせて‥。


律也にとって、いつ見てもユウトは、心をきゅんとさせる”美少年”であった…。


「早かったね」


「そっちこそ」


二人の挨拶も、彼ら特有の流れるリズム感で、短くとも実に何ともな絢を醸すものがあった。


***


「…さっそくだけど、今度の土曜日、オレと一緒にヨーコの家に行かないか?」


「えっ…?」


さすがにいきなりだったので、律也はちょっとあっけにとられた。
すると、ユウトはにっこり笑って、”補足”した。


「うん。昨日になって、川原で会ったトモダチも連れてきなよって言いだしてさ…」


「…」


ユウトは律也の反応を確かめながら、間を図って話をしているようだった。