その3



律也が二人の女性に目をやって軽く会釈すると、一方の女性がユウトの肘をつついていた。
ちょっと意地悪そうな微笑を浮かべて…。
ユウトはやや困惑した体だったが、例の笑顔で女性二人を紹介した。


「ああ、兄貴のカノジョの友達でチヅルさんとヨーコさん。…そんで、彼は同級生の河合律也…」


「初めまして。河合です」


「どーも」


「こんばんわ。でも、河合君の彼女もかわいらしいわね」


すかさず背の低い方の女性からは何ともな微笑を浮かべて、意味深なフリが返ってきた。
これをストレートに受けた律也は小っちゃいカノジョに言葉を投げた。


「カオリちゃん、お姉さんたちにご挨拶できるかな」


「うん、できる。はじめまして、カオリでーす!」


「まあ、お利口さんね…」


「ほんと、かわいい。綿あめおいしい?」


さすが年上の女性二人は、早くもすぐにカオリちゃんと談笑であった。
そんな様子を確認したあと、ユウトは律也に小声で話かけた。


***


「ちょっと、そこで話せるかな?」


「ああ、いいよ。…カオリちゃん、ちょっとお兄ちゃん、友達とお話してくるからね」


「じゃあ、カオリちゃん、お姉さん二人と待ってようね」


すかさず背の高い方の女性がしゃがんで、カオリちゃんの頭を撫でながら相槌を入れた。


「うん。お兄ちゃん、ここで私待ってるよ」


ここで律也は、ユウトと露店の裏側に移動した…。