その1



その週の日曜日はあいにくの雨だった。
それでも律也は、傘をさして徒歩15分程度の○○町児童館に赴いた。


彼が児童館に着いたのは、午後2時ちょっと前だった。
この時間帯を選んだのは、単純に前回ユウトがココに来ていたのが遅い午後だったからだ。


”わー、参ったな。けっこう濡れちゃった…”


ここへ来る途中から、急に雨足が強くなって、ズボンの裾と靴下はしょびしょだった。
律也は入り口玄関で靴下を脱いでから持参した上履きに裸足で履き替えた。


”これで彼が来てなかったら、無駄足か…”


どうしてもネガティブモードに入ってしまう律也は、まず、図書コーナーに向かった。
さすがに一人では、いきなり遊戯室に入っても、ちょっとばつが悪い。
彼はここでも、ち密な計算を折り込んでいた。


つまり、今日の目的はある調べ物で児童館の図書コーナーを訪れたと…。
何しろ、律也の自宅から図書館までは遠い。
今日は雨だし、つじつまは通る。


あとは適当に本を借りて、その帰りに1階の遊戯室を覗いてみる。
そこに跳び箱なりに興じるユウトがいれば、偶然を装って、”この前はどうも…”という流れにもっていける…。


仮にユウトの姿がなくても、しばらくはロビーで持ちだしの本でも読んで、夕方まで待ってみるつもりだったのだ。


彼の組み立ては、およそこんなところであった。


***


図書閲覧コーナーは2階のフロアにあった。
フロアには雨天ということもあって、小学生らしき女子数人のグループ一組と、親子連れがいるだけだった。


律也は太陽系の図鑑っぽい本を1冊選んで、しばらく椅子に掛けて流し読みをしていた。
しばらくして時計を見ると、2時40分だった。


”この前、ここでユウトが跳び箱を跳んでたのが、3時前から3時半過ぎくらいだったよな。そろそろ行ってみるか…”


彼はその本を1週間の貸出手続きを済ませ、1階に降りていった。
すると…。