「リナは誤解してるかもしれないけど、ママも失恋したことはあるよ?」

そう告げると、

「無理しなくていいよ。パパと今でもラブラブなのはわかってるし、それは昔からなんでしょう?」

もしかして、毎朝こっそりキスしているのを見られたのかと思い、思わず冷や汗…。

「確かにね、パパは私の初めての彼だったわよ。でも、その前に一度だけ、情けない失恋もしたことはあるの」

「どういう意味?」

「あれは確か、私もリナと同じ中2の頃だったかな?同級生のことが好きだったの。今だから言えることだけど…。その相手っていうのが、学校のマドンナみたいな、凄く華やかな子だった」

「え…?」

「そう、私は女の子を好きになってしまったのね。ママは今でこそ先生なんて呼ばれる立場になったけど、あの頃は冴えなくて、絵を描くのが大好きなのに、その絵も誰からも認められないような状態。ある日、そのマドンナから『陽子って、ピカソみたいだね』なんて言われて、もともと、自分と正反対の彼女には憧れてたけど、そのうち頭の中は彼女でいっぱいになっていったの」