好きな人が一直線に私を見て、


私のこと“だけ”を見て、


好きな人の一挙一動にドキドキして、心臓がうるさくなって、


どうしようもなく「好きだ」って気持ちがいっぱいになるなんて、そんなことは、




「ねえっ!葉月(はづき)っ!」





……私には、あるわけがなかった。





「……ごめん真悠(まゆ)。聞いてなかった」


「もうっ!葉月ってばずっとぼーっとしてるんだもん!そんなに惚気を聞きたくないわけ!?」


「ううん、そんなことないよ、ごめんね?」


「じゃあもう一回話すからちゃんと聞いててよねーっ!」




ふいっとしたかと思えば、“彼方”くんの話を始めればすぐに幸せそうに、愛おしそうに表情を緩める、大好きな私の親友。


くるくる変わる可愛らしい表情に、女の私ですら目を奪われるんだから、

真悠と付き合っている彼方くんは毎日天真爛漫な彼女に楽しく振り回されているに違いない。