「ねぇー。真宮、お前何しに学校来てんの?」

後ろの席の古賀くんが机に頬杖をついて真宮くんに話しかける。

「琴乃に会う以外に何がある?」

自分で言うのもおかしな話だが、あの日から真宮くん溺愛が止まらないのだ…。
手を繋いでみんなのところに戻った事も驚かれたが、『まだ付き合っていないが近いうちそうなる。』と宣言したのだった。
今では休み時間になるたびに私の席にきて膝に座らせては抱きしめている。
呼び方も『おまえ』から『琴乃』に変わり笑顔が増えた。
ずっと名前で呼びたかったそうだが、恥ずかしくて呼べずにいたそうだ。そんな人が何で平気で膝に座らせているのかがわからない。
咲良さんの話によれば真宮くんの笑った顔はかなりレアらしいのだが、私を膝に乗せている時は不気味なくらいずっとニコニコしている。

「真宮さぁ、僕に琴乃は婚約者がいるから口説いたらダメだって言ってなかったっけ?」

「お前はダメだけど俺ならいいんだ。」

「なんだその王様発言!」

「そのうちわかる。」

耳の後ろにキスをしてきた。

「ちょっと!人前でやめてよっ!!」

「俺にも琴乃を分けてくれよぉ~。」

「古賀、晴翔の所有物に手を出したら社会的に消されるぞ。気を付けろよ。」

小学生の頃、頭の良さで目立つ真宮くんに嫉妬したクラスメイトの男の子が真宮くんをいじめたことがあったそうで、その子の親の仕事など身の回りを徹底的に調べ上げ、経済的につらい状況に追い込み聖麗学園から追放したそうだ。
真宮くんが最後にその子に放った言葉から犯人は真宮くんではないかと噂になったが証拠は何も出なかったという。
お願いだから高校生にもなってそんな物騒なことをしないでほしい。

「さ、晴翔、そろそろ次の授業が始まるから席に戻るぞ。」

授業前になるとこうやって真宮くんを席に連れて帰るのが柳くんの日課になってしまった。

「まだチャイムは鳴ってない。」

「真宮くん、行った方がいいと思うよ。」

「琴乃が言うなら仕方ないな…。」

別れを惜しむように頬にキスをしてから席に戻っていた。

「…あいつ、完全にぶっ壊れてない??」

呆れた様子で先へと戻っていく真宮くんを眺めている。
確かにアレは『ぶっ壊れた』と表現するのが適しているのかもしれない…。

「おーし!みんな席についたかー?」

担任の山本先生が勢いよく入ってきた。

「今日は6月の修学旅行のグループ決めだ!男女合わせて6人のグループ作れぇ〜!場所はグアムだぞ〜!」

グアムと聞いてテンション上がったのはどうやら私だけのようで、皆、驚きも何も無い様子だった。セレブにとってグアムは庶民が熱海に行くような感じなのだろうと勝手に置き換えた。

 私は熱海でも嬉しけどな…。

「琴乃ちゃーん!同じグループになろぉー!」

元気よく牧野さんが寄ってきた。
まぁ、予想はできていたが既にいつもの仲良しでちょうど6人だ。

「グアムは子供の頃からよく行っている。俺に任せろ。」

私の手を取りキスをして、そしてしっかりと見つめてくる。

「…はは。ありがとう。」

「おぃおぃ、そーゆーのは1人にでなくグループメンバー全員に言えよ…。」

私の手を取る真宮くんの手を古賀くんが払う。

「古賀だってグアムなら行き慣れてんだろ?なら、俺なんかいなくても平気だろ?琴乃は初めての海外だからな!」

「琴乃さん、こんな面倒臭い男どもはほっといて3人お揃いの水着買いに行きましょ!牧野さん、どうです?」

「お揃い素敵〜!デザイン同じで色違いとかも可愛いかもぉーっ!」

ショッピング好きの牧野さんは大喜びだった。

「なら、咲良も誘って皆んなで行こう。」

「えっ?なんで真宮くんまで?」

女性用の水着を買いに行くのに真宮くんは関係ないのに一緒に来る気でいるようだ。

「琴乃が身に付けるものは俺が用意したい。」

「えっ!?水着くらい買えるよ?」

「こないだ買ってやらなかったからな。…それに、俺にも好みがある。」

少し顔を赤くしながら言った。

「えーっ!お揃いじゃなきゃ嫌ぁ〜。」

「じゃあ、俺が選んだやつに合わせろ。その代わり支払いは俺がしてやる。」

「えっ?本当に?やったぁー!」

牧野さんはスポンサーが付いて喜んでいた。