盗聴を捜索した日から数日が経った。朝から気温が下がり予報では雪になるかもしれないと登校前に寮の食堂にあるテレビのニュースでやっていた。今日の様に冷え込んだ朝には婚約者こら届いたマフラーと手袋がとても役に立った。

昨日は深雪さんが生活する寮の生徒用キッチンでナッツとブロックチョコがぎっしり詰まったチョコレートブラウニーを咲良さんと3人で作った。
クラスの人数分の個数に小分けにし、可愛くラッピングもした。

「まるで一流のショコラティエが作ったみたいに立派ですわ!」

「うんうん!お味も良いですね!」

「先輩には別に用意するんでしょ?」

「はい、先輩にはフォンダンショコラを作りました!」

「「すご〜い」」

思わず咲良さんと声が揃ってしまった。

3人で楽しく作ったチョコレートブラウニーを携えた今日はバレンタインデーなのだ。
朝のうちに配り終えたかったので3人で普段よりも早やく登校したのだが、既に真宮くんの机の上にはチョコレートと思われる小さな紙バッグで山積みになっていた。

「さすが真宮くん!モテ具合がエグいですね。」

友チョコがメインになっている現代でこのチョコの量は凄いと思う。確かにエグい。

「真宮くんは頭はもちろん顔立ちも良いですしアメリカでCEOされてますから騒がれるのも無理ないですわ。」

「CEO!?だからあんな話し方が傲慢なのね!そのうちパワハラで訴えられそぉ!」

「…誰が傲慢だパワハラ訴えられるって!?」

後ろから間宮くんに小突かれた。

「痛っ」

「あら、おはよう真宮くん」

「おはようです。これ、私たち3人から!」

深雪さんは真宮くんの分のチョコレートブラウニーを取り出して渡した。

「ありがとう。横山さん。」

お礼を言うとチラッと私を見た。

「横山さんと一緒に作ったならお腹を壊す心配ねぇーな!」

「はぁ!?」

何か言い返してやろうかと思ったが、自分の席に山積みにされたチョコを見てため息をついていたので、言い返すのをやめた。

「この山の様なチョコどうするの?」

「とりあえずどかす。」

「おぉ、今年も晴翔の机は山になってんなー。」

柳くんが登校してきた。

「柳くんの分もありますよ。」

「ありがとう、深雪さん。」

「柳くん、真宮くんのチョコ去年もすごかったの?」

「ミスター聖麗学園に選ばれて有名人だったからね。去年は朝から学年問わず女子生徒が寮にまで押しかけて来てたかな。」

「ほんと去年はウザかった。」

「晴翔、袋ある?」

「予想してたから持って来てるけど、入りきらないかも…。」

「水族館に行った時に買ってもらったエコバッグなら私あるよ。」

カバンからペンギンのエコバッグを取り出して真宮くんに渡した。

「サンキュー」

バッグを渡した時に触れた手が何となく熱い気がした。

 歩いて教室まだ来たからかなぁ?

机の中にまで押し込まれたチョコレートの他には『HAPPY BIRTHDAY!』とカードのついたプレゼントもいくつか混ざっていた。

「真宮くん、今日が誕生日だったんですね!」

深雪さんがパチパチと手を叩きお祝いも伝えた。