次の日、登校すると真宮くんが来るのを待った。
咲良さんに見せたメモの件で天才である真宮くんであれば色々対応できるはずだ。というからだ。
いつも近くにいて鬱陶しいくらい文句を言ってくるのに待っているときに限って登校してこない。
結局、真宮くんが登校してきたのはほぼ担任と同じ時間だったので朝のうちに話をすることができなかった。真宮くんを待ちながらそわそわしている私と咲良さんに気づいた柳くんだったが、何を始めるのか様子見といった感じだった。
昼休みが始まる直前、こっそり真宮くんに手紙を回した。

『話したいことがあるので、昼休みになったら屋上に向かう階段の踊り場で待ってます。絶対に一人できてね。琴乃』

真宮くんがメモを読むと驚いた顔でこちらを見た。『絶対に来て欲しいの!』とアイコンタクトを送ると、真宮くんは手で口を押さえもう一度メモに視線をやった。そして、自分のノートの端を小さく破ると、こちらに投げてきた。

『わかった。絶対に行くから待ってろ。』

 良かった!来てくれる!

メモを読み終えると、真宮くんに両手を合わせ感謝を伝えた。この時、真宮くんの顔は耳まで赤くなっていたのだが、まったく気が付かなかった。

4時間目が終わるチャイムが鳴ると教科書を片付け、屋上に向かう階段へと移動した。心配そうに咲良さんがこちらを見てきたので、小さく手でOKのサインを出すと少しホッとした表情を見せる。

普段は屋上は使われていないので鍵がかかっている。そのため屋上へ向かう踊り場はほぼ人が通らないので告白で使われることが多いそうだ。今回の様に大きな声で話せない相談ごとをするには打ってつけの場所だった。
誰も通らない階段に座って真宮くんを待っていると思っていたより早くやってきた。

「ごめん…、待たせた?」

「ううん、大丈夫。こっちこそ突然呼び出しちゃってごめんね。」

『なんだよ俺を呼び出しやがってっ!』と文句を言われるかと思っていたけれど、意外としおらしかった。

「あれ?真宮くん、顔赤くない?風邪でも引いた?熱っぽいとか?」

「…いや、ちょっと緊張してるだけ。で、話したいことって何?」

真宮くんが緊張なんて珍しい。5時間目の授業で先生に宛てられそうなのかな??

「実は真宮くんに相談したいことがあって…。」

「はっ!?相談?(っんだよ、てっきり告白かと…)」

「えっ?なに?ごめん良く聞こえなかった。」

「何でもねぇよっ!わざわざ俺を呼び出して相談って何だよ!」

予想通りの反応に戻った…。さっきまでのしおらしさはどこに!?ってか、今のやり取りでどこに怒りスイッチのあったのやら…。

「ごめんここからは筆談で!」