修了式から2日後、荷物をまとめて自宅に戻った。冬休みの期間は短いので大抵の人が寮から直接、両親と海外旅行に行く人が多かった。
咲良さんは忘年会、新年会で実家である料亭が忙しくり猫の手も借りたい状態なので毎年帰宅しているそうだ。
深雪さんは毎年ご両親とオーストラリアで年越しをするそうで、終業式のあとすぐに空港へ向かった。時差がなく暖かいところで過ごしたいというご両親の考えだそうだ。彼女自身はダイビングが好きなので短い休みだが島をめぐっているという。
私は前回帰宅した時の様に婚約者と鉢合わせする事があるのでは…と期待したが、父の元へ新年の挨拶に来るのは一般の部下と親戚のみで運転手がついた婚約者っぽい人は居なかった。
久々の自宅なのでのんびりしたかったのだが、新年の来客を見越して母との準備で忙しく、初詣も行けないまま冬休みは終わった。

寮に戻ると1月の贈り物が届いていた。クリスマスに貰ったコートに合わせたマフラーと手袋。そして、メッセージカード付きのミニブーケには『いつも君を想っている。君の婚約者より』とあった。
学校指定の紺色のコートがあるので学校へ贈り物のコートを着ていくことができず、プライベートで着るしかないのだが、マフラーと手袋は自由なので学校へつけていくことができた。
白のコートに合わせて送られてきたマフラーと手袋だが、クラスメイトはみな私にデザインとカラーがとても合っていると言ってくれた。

「琴乃さん、やっぱりあなた、その婚約者に会ったことがあるんじゃなくて?贈り物はあなたにピッタリのモノばかりですし、カードのメッセージも琴乃さんを意識するものばかり…。」

「なんども言うけど、こんなセレブな知人なんていないよー…。この学校で知り合った友達は別だけど…。」

相手がどんな贈り物を選ぶかで婚約者のことを探ってやろうと思ってお願いした毎月の贈り物だが、初めは予想以上に
高価なものばかりでとても焦った。しかし、徐々に徐々にと私に寄り添った贈り物になっている気がする。
クリスマスにわたしが真宮くんにこぼした言葉。
『愛を育んだ先に結婚をしたい…。』
『婚約者の彼はそんな事一切望んでいないのかもしれない…。』
それに対する返事を返すように『いつも君を想っている。』とカードに書かれていた。

「まさかっ!」

「琴乃さん?どうされましたの?」

突然立ち上がった私に咲良さんは驚いて飲んでいた紅茶のティーカップを落としそうになっていた。
私が思いついたことをメモに書き記し、そっと咲良さんに見せると頷いて同意した。