びしょ濡れで寮に戻った後、すっかり風邪をひいてしまったようで朝から38度を超える熱がでた。
咲良さんは看病のために学校を休むと言ってくれたのだが、大丈夫だと言って登校してもらった。

咲良さんが学校から戻ると、私宛てに荷物が届いていると運んできてくれた。
いつものブーケが乗っているので婚約者からの贈り物なのだろう。
熱は今朝の温度をキープしたままだった。

「『こんな時に側にいられたら…。君の婚約者より。』だそうよ。箱も開けましょうか?」

咲良さんがカードのメッセージを読んでくれ、贈り物を開けてくれると言うのでお願いをした。

箱の中には小型の加湿器に膝掛けやサプリメント、ゼリー飲料やお菓子など色々な物がぎっしり詰め込まれていた。私が体調を崩して学校を休んだことが婚約者へと連絡されたのだろうか??
まぁ、学費を出しているのは彼なのだからそういった連絡がいくのはおかしな事ではないと思った。

「琴乃さんのことが心配でこんなに荷物を詰め込んで送ってくるくらいなら、直接電話でもしてくればよろしいのに。」

私が熱でうかされている中、咲良さんがぼやいていた。
その日から3日間ほど熱が続き4日目の熱が下がったころ、両親から電話があり私に水をかけた生徒たちが退学になったと教えてくれた。私の発熱の原因を聞いた婚約者が激怒し、校内の監視カメラから犯人の女子生徒を探し出して学校側に処分を求めてくれたそうだ。
発熱してから5日目はすっかり元気になっていたのだが、今週もたった一日だし、用心のためにと学校はお休みをしたので、結果、文化祭後は丸々一週間休むことになった。

週が明けて登校すると古賀くんがクラスに来ていた。

「琴乃~!僕のせいで嫌な思いさせてごめんねぇ!体調はもう平気?」

「なんでお前がここにいんだよっ!さっさとC組に戻れっ!」

既に登校して隣の席に座っていた真宮くんが古賀くんに文句を言う。

「真宮。僕のせいで琴乃が嫌な思いをしたんだよ。直接謝るのが筋ってもんだろ?」

これに対しては何も言い返せないようだ。

「古賀くん、体調も良くなったし、もう気にしなくて大丈夫よ。」

「ほんとに?琴乃って優しいね。だから好きになっちゃったのかも。」

「「はっ!?」」

真宮くんと声が揃ってしまった。

「琴乃が僕のファンだって子たちに攻撃された話をきいてすごく心配だったんだ。居ても立っても居られないくらい。それで気づいたんだよ。僕、琴乃のこと彼女にしたい。」

「古賀くん、突然そんなことを言われても…。わたし…。」

「大丈夫、少しずつ僕のことを好きになってもらえるように頑張るから。あ、ホームルーム始まるからクラスに戻るね~」

言いたいことだけ言うと古賀くんは自分のクラスに戻って行ってしまった。

「…んだよ。まじかよ…。何なんだよあいつっ!」