花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない

「修治?あぁ、柳くんの事か。咲良さんと柳くんの組み合わせが素敵だなぁって思って見てただけだよ。」

「それは質問の答えじゃない。」

 はぁー…。突然何なんだ?

「友達としては好きだけど、恋愛としてならNOよ。」

「そうか…。」

と、真宮くんはつぶやいて笑顔になったのだが、彼と目が合わないようになるべく下を見ていた私には見えなかった。

「ほら、あーゆーのが良いんだろ?」

と、膝を突き出し腕を組ませようとしたので、仕方なく真宮くんの腕に手を添えた。
階段では柳くんの様に一段下がって手を取ってくれたので、普段失礼なこの男もこんな紳士な振る舞いが出来たのかと意外に思った。

メイン会場に着くとすぐに、

「二年生の男子生徒はパートナーの手をお取りになり、中央へお集まり下さい。」

と司会の先生がマイクを通して言った。
慣れないイブニングドレスとヒールの高い靴で思ったよりも到着が遅くなりギリギリ間に合った感じになった。

アナウンスに気づいた真宮くんは私の前に立ち
お辞儀をすると、

「君と踊る名誉を僕にもらえないだろうか。」

と言って手を差し出した。

 き…急に何!?

「えぇ。もちろん。」

私は了承の返事をし、彼の手を取り2人で会場の中央に向かった。

 真宮くんと踊ることは既に決められたいるんだから、こんなダンスを誘う言葉なんて要らないのに…。

練習の時のように、腰に手を回されグッと引き寄せられると、以前香ってきたシトラスの香りがした。