ん? ちょうどいい?
 ちょうど良いって何にいいんだ?

と、意味が解らない顔をしていると、

「琴乃さん、ご存じないの?2週間後に生徒会主催のクルーズパーティがあるのよ。」

「えっ?えーーーっ?クルーズパーティ!?」

毎年10月になると生徒会主催で夕方からクルーズ船を貸し切ってパーティを行う行事があるそうで、そもそもセレブが集まるこの学校ならではの考えで、将来、こういったパーティに参加した際のマナーや場慣れを目的としたものだそうだ。
そこにはもちろんドレスコードがあり女性はイブニングドレス着用とのことだった。

 イブニングドレスなんて持ってなかったからナイスタイミング!
 婚約者の方はこの行事を知っていたのかしら??

「琴乃さん!ドレスも着てみて!」

と促されてドレスを着てみる。制服作る際に採寸した寸法通りに仕立てたのか、タイトになるウエストやヒップのラインがぴったり綺麗に出ていた。ヒップのすぐ下から足元にかけて広がるデザインはスリットが入り歩くたびにふわりと揺れて優雅な印象を与えた。私が少しでも太ければこのウエストとヒップのラインは台無しになるだろうが、しっかり採寸しているので私にぴったりだった。

「琴乃さん!素敵!」

と言って咲良さんも自分が着る予定の黄色のイブニングドレスをクローゼットから取り出し、着替えると二人でスマホのカメラで写真を撮った。
そして、真宮くんの加わったアプリのグループに写真を送った。

直ぐに全員既読になり深雪さんと柳くんからは『かわいい!』とか『Good!』など褒めるスタンプが返ってきたが、相変わらず真宮くんは無反応だった。

今回の婚約者からの贈り物では、私よりも学校の行事を把握していること、キザなところがあること、ドレスに合わせたアクセサリーについている宝石はすべて本物であり、確実にお金はあることが分かった。
前回同様に自分が思っている以上に相手は私との婚約を前向きに考えてくれているのだと思った。